食品業界最前線

SDGs「持続可能な開発目標」聞いたことがある8割
SDGsブランディングでヒット?!脱プラ「キットカット」をレシートから分析

フィールド・クラウドソーシング事業を展開する株式会社mitoriz(本社:東京都港区、代表取締役社長:木名瀬博)は、全国のアンケートモニター(以下、POB会員)から月間1500万枚のレシートを収集する国内最大規模の(提携サイト含める)、日本初のレシートによる購買証明付き・購買理由データベース「マルチプルID-POS購買理由データPoint of BuyⓇ(以下、POBデータ)」を活用し、生活者の購買行動を分析しています。

今回のテーマは「SDGs※(持続可能な開発目標)につながる行動や商品に関する関心」です。2015年国連サミットで採択されたSDGsの目標達成をするためのゴールとされた2030年まで残すところ10年を切り、日常生活の中でも「サステナブル」や「エコ」を訴求する広告や、それらに配慮した商品やサービスなどを見かけるようになり、SDGsに対して生活者の意識はどのように変化しているのでしょうか。

調査期間:2022年3月17日~18日(エリア:全国、平均年齢47歳)インターネットリサーチ調査

最初に、アンケート対象者2020人に「SDGsという言葉を聞いことがあるか」尋ねると、6割が「聞いたことがあり、意味まで知っている」(60.0%)と回答し、年代別でみると「~30代、N=328人」(62.5%)と、「60代、N=194人」(61.9%)が平均値を超えました。

また、「就業中」の1619人に対しては、「勤務中の会社で、SDGsの17の目標のうち、何かしら実践しているか」尋ねると、およそ3割が「実践している」(29.7%)と回答し、その目標は、「7.エネルギーをみんなにそしてクリーンに」(41.8%、N=481人)が最も多く、「8.働きがいも経済成長も」(39.1%)、「5.ジェンダー平等を実現しよう」(38.9%)、「12.つくる責任 つかう責任」(35.1%)「3.すべての人に健康と福祉を」(34.9%)が続きました。

具体的な取り組みの一例としては「外部へEV授業(50代男性、自動車メーカー勤務)」、「カーボンニュートラルや、働き方改革に力を入れている(40代女性、エネルギー関連勤務)」、「看護師には女性が多いがジェンダーレスの実践として男性上司も増えてきた(50代女性、医療関係勤務)」といったコメントがありました。

次に、「普段生活の中でSDGsを意識した行動をしているか」尋ねると、半数以上が「意識している」(52.3%)と回答しました(図表2)。

「普段生活の中でSDGsを意識した行動をしている」と回答した1056人に、その行動を尋ねまとめたもので、「フードロス削減・防止」(78.0%)が最も多く、「エコバックを使いレジ袋は使わない」(76.6%)、「できるだけゴミを出さない・減らす」(67.4%)、「詰め替え用の商品を買う」(65.7%)などの日常生活の中で習慣化された行動が上位回答となりました。他にも、環境保全に役立つことが認定された商品につけられる環境ラベル商品の認知度が高い「エコマークの商品を購入する」(37.1%)は、トイレットペーパーやごみ袋など、身近な商品パッケージにもつけられているため、4割を超えましたが、「リサイクル素材や資源保護ラベルの商品を買う」(18.5%)といった行動は、2割に満たない結果となりました。

次に、小売りチェーンや、食品・消費財メーカーが取り組む「SDGsを意識した商品の購入やサービスの利用」を調査するために、今回は図表内に記載した取り組みをセレクトして尋ねました(選択肢・複数回答)。

 

「SDGsを意識した商品の購入やサービスの利用」は、「ペットボトルの回収(スーパー・コンビニ等)」(55.9%)が、「買い物ついでに利用・自宅のごみの削減につながる」といった理由から、最多回答となりました。「ペットボトルの回収」について、セブン&アイを例に挙げると、イトーヨーカドーなど傘下の「スーパー」を含め、2021年2月末現在1001台のペットボトル回収機を設置し、より利便性の高い場所にある「セブンイレブン」にも拡大するなど、グループ全体で資源を有効活用し持続可能な開発目標に取り組んでいます。

他にも、利用経験のあるSDGsを意識した商品やサービスとしては、「紙パッケージのキットカット購入(ネスレ日本)」(40.0%)、「エコ割、消費期限が迫った商品の割引(ファミリーマート)」(30.7%)、「規格外野菜の購入(スーパー、ネットスーパー)」(30.7%)、「ボトルレス商品購入(花王)」(24.2%)が上位回答となりました。

次からは、メディアで話題を集めた3つの商品に着目して、購入者のコメントをみていきましょう。

まず1つ目は、2020年春に「無印良品」から発売された「コオロギせんべい」。コオロギは栄養価が高く、飼育面での環境負荷の低さから、食料危機への対策として注目を浴びている昆虫食のひとつです。「コオロギせんべいは、無印の店頭で見てインパクトがあって購入(40代女性)」、「ダイソーで、コオロギせんべいを見かけて購入(30代女性)」など、無印良品がブームの火付け役となり、販売も広がりをみせているようです。

2つ目は、今年で38周年を迎える「日本ハム」のロングセラー商品「シャウエッセン」。特徴的な巾着タイプの包装から、2022年2月にプラスチック使用量を28%削減できる「エコ・ピロタイプ」包装に変更しました。「パッケージの違いを確認したく購入(40代男性)」、「断髪式の動画を見て、プラスチック削減に共感してシャウエッセンを購入(60代女性)」など、「シャウエッセン断髪式」と題した公式twitterアカウントで配信された動画では、巾着部分を力士の髷(まげ)に見立てて、ハサミを入れていくユニークな動画がきっかけで購入したといった声もありました。

最後に、2019年9月から、海洋プラスチックごみの課題解決に向けた取り組みを加速するため、世界で最も「キットカット」を販売する日本市場で、大袋タイプ5品の外袋を紙パッケージに変更した「ネスレ日本」。

従来のプラスチック製パッケージと比較して、年間450トンのプラスチック削減を見込んでいるといいます。紙パッケージを活用したコミュニケーションや、環境問題の啓蒙活動などの効果もあり、「キットカットが、プラスチック削減で紙パッケージにしたことがきかっけで、久しぶりに購入した(30代女性)」「キットカットが紙パッケージになったことを知り、購入頻度が上がった(30代女性)」といったコメントもありました。

実際に、「キットカット」の購入率がどのように推移したか、「POB会員から取集する購入レシート全枚数」に占める「キットカットのレシート出現率」を分析しました。

上図は、2020年9月~2022年3月における「POB会員の購入レシート全枚数」に占める、「キットカットのレシート出現率」を図表化したものです。※毎月の購入レシート全枚数が異なるため、レシート1000枚あたりの出現率で分析。

チョコレート菓子の購入数が減少する夏場の21年6月から8月は、レシート1000枚あたりのキットカットレシート出現率は<1.2~1.8%>となりましたが、21年9月以降は上昇傾向で、同年12月には、受験生応援商品「キットカット ミニ 紅白パック」の販売もあり、レシート1000枚あたりの出現率(2.7%)に上昇。翌年1月にはその反動で(2.0%)になったものの、2月以降も2%台をキープし現在も好調です。

 

これまでの調査結果から、生活者のSDGsを意識した取り組みに関しては、「フードロス防止・削減」、「ゴミを出さない、リサイクルする」など、日常生活の中で習慣化している行動が上位を占め、「SDGsや環境問題などに配慮した商品購入」においては、「コンビニなどのエコ割」「規格外野菜の購入」「詰め替え・ボトルレス商品の購入」といった、身近で購入しやすい商品が選ばれていました。

企業は消費者に対し、その商品やサービスを利用することでどのようなサステナビリティに貢献できるのか、わかりやすく訴求するのはもちろん、商品に関する驚きや楽しさとともに発信することで、より共感を得られやすく、企業のブランディング、商品やサービスの認知や購入促進につながることがわかりました。

4月からは、プラスチックごみの削減とリサイクルの促進を目的とする「プラスチック資源循環促進法」

が施行予定です。プラスチック資源循環促進法の目的は、プラスチック製品の設計・製造から廃棄物の処理に至るまでのライフサイクル全体を通じたプラスチック資源循環(3R+Renewable)の促進を図ることです。プラスチック資源循環促進法が施行されると、これまで無料提供が当たり前だったホテルのプラスチック製の使い捨て歯ブラシやクシ、カミソリなどのアメニティも有料化されます。生活の中で、脱プラを初めとする環境問題やSDGsに対しての理解が深まることで、自分がどんな行動ができるかなど、改めて考えるきかっけになりそうです。