まずはアンケートで、各チェーンのメーン利用者に「昨年の今頃と比較して食品の値上げ」を感じるか尋ねると、5社平均値で8割以上の人が「値上げを感じる」(82.2%)と回答しチェーン問わず、店頭価格に大きく影響していることがわかりました。
そのうち、まとめ買いなどの理由で、最も金額が高くなると推測される「メーン利用チェーンを週1回~2回程度利用する人(N=202人)」の「1回の買い物あたり増えた金額」を調査すると、「~500円以内」(39.6%)が最も多く、僅差で「500円以上~1,000円未満」(39.1%)が続く結果となり、1か月あたりで換算すると、「2,000円以上」増加し、家計に大きな負担がかかっていることが考えられます。
次に、値上げを感じると回答した541人(チェーンごとのメーン利用者:イオン192人、業務スーパー98人、マックスバリュ85人、オーケー84人、ライフ82人)に、「値上げを感じるカテゴリー」を尋ねると、「野菜・果物」(66.6%)が最も多く6割を超え、「小麦粉・片栗粉・ミックス粉」(43.6%)、「パン・ベーカリー」(43.5%)、「卵」(32.3%)、「精肉」(31.3%)が続きました。
取り扱うカテゴリーに影響されますが、チェーン別の特徴をみると「オーケー」では、「調味料」の値上げを感じる人が(34.1%)で5社平均値(24.2%)を<+9.9pt>、「ライフ」では、「ティッシュ・トイレットペーパー」の値上げを感じる人が(30.5%)で5社平均値(25.4%)を<+5.1pt>上回り、「調味料が全般的に値上がりしていると感じる(オーケー利用、50代女性)」、「トイレットペーパーなどは微妙な単位での値上げが続いているように感じる(ライフ利用、30代女性)」といった声が一定数ありました。
次に、値上げによる家計の影響により、昨年と比較した際の「1回の買い物金額」の変化を尋ねると、5社平均値で6割以上の人が「昨年よりも高くなった」(67.3%)と回答し、その割合をチェーン別でみると、「業務スーパー」(76.5%)が最も高く、最も割合が低い「ライフ」(61.0%)を<+15.5pt>上回りました(図表3)。
参考までに、POB会員から収集する「業務スーパー」と「ライフ」の購入レシートから、レシート1枚あたりの平均購入金額を分析すると、2021年8月の平均購入金額は、「業務スーパー(1,024円)」、「ライフ(1,177円)」に対し、2022年3月には、「業務スーパー(1,408円)」、「ライフ(1,466円)」となり、2社の平均購入金額の差は<153円→58円>にまで、迫っていることがレシートからわかりました。
「業務スーパー」においては、昨年7月に欧米からの輸入品の一部商品および、アジアから輸入しているPB200品目の値上げに踏み切っており、値上げ幅は平均で約8%。商品価格の見直しは随時行っているものの、今回の規模の値上げは2008年の小麦価格高騰や13年の急速な円安以来だといいます。
メーン利用者から「冷凍食品、輸入品が値上がりした。安かった輸入肉や鶏肉も高くなった(40代女性)」「冷凍食品や、加工食品も10円~20円程度高くなっている(30代女性)」といった声が挙がり、「業務スーパー」だけではなく、輸入品を多く取り扱うスーパーにおいては、今後円安の要因加わることで、更に対応に苦慮することも予測されます。
こういった値上げによる、消費者の「買い方の変化」や、この状況を「乗り切る工夫」など、コメントをピックアップしました。
⚫︎買い方の変化
「味や食感が気に入っている食品(パンや納豆など)は値上げしても同じブランドを買い続けるが、サラダ油やマヨネーズはそんなに味の大差がないのでPBを買う(40代女性)」「好きな香りの柔軟剤や、この味じゃないと食べたくないと言う調味料だとか、妥協できないものは高くても使い続けると思う(40代女性)」「基本的には少しでも安いものを購入したいので、そのカテゴリーの中で最安値ならブランド等にはこだわらなくなると思う(50代女性)」
⚫︎値上げを乗り切る工夫
「ポイント付与が多い店を選んでいる(40代女性)」「クーポンを使ったり、割引やお得な日の時に買い物をすることです(30代女性)」「なるべく安い品物で献立を考える(50代女性)」「豆腐やもやしでかさ増しする(50代女性)」「使い切れる量のみ購入している。安いからと言って大量買いをしなくなった(60代女性)」
最後に、現在の「節約と消費」に対する意識を尋ねると、「昨年同様に節約意識が強い」(33.6%)よりも、「昨年より節約意識が高まっている」(40.8%)が<+7.2pt>上回りました。その理由は、「給料も上がらないのに、値上げばかり続くので節約を意識するようになった(30代女性)」、「電気代等も上がるので引き続き節約する(40代女性)」といった声がありました。
一方で、「昨年より消費意識が高まっている」(5.9%)は少数派となりましたが、「出掛ける機会が少ないので、長期に渡るコロナ禍のストレスもあり、お金を多く使ってしまう事がある(50代女性)」や
「値上げによって、節約メニューを調べて材料を買うようになった一方で、家電や調理器具で、消費するようになった(50代女性)」といった声があり、自粛疲れやイエナカ時間を楽しむために消費するといった声がありました。
4月以降も値上げは続き、ロシアのウクライナ侵攻で小麦などの価格が一段と上昇しているうえ、急激な円安も物価上昇に拍車をかけています。価格に敏感な消費者の一部は、NBからPB商品を選ぶようになり、
イオンPB(トップバリュ)や西友PB(みなさまのお墨付き)は、6月末まで食品・日用品の価格据え置きを発表していますが、各チェーンの努力だけではコスト上昇を吸収できなくなる可能性も高く、ライフPB(BIO-RALビオラル)のように、「オーガニックや健康」といった価格以外の魅力を訴求するPBが好調だといいます。
今後は新たな付加価値を提供するPBの商品開発が進むことが予想され、「メーカー・小売チェーンの売り方」や、「消費者の買い方」の変化にも注目していきたいと思います。